コロナ禍が長期化するにつれ、アフターコロナに備えた新しい働き方の変化が注目されるようになっています。わかりやすいのは、テレワークの普及でしょう。感染対策のため一時的に導入した企業も少なくありませんが、一部ではニューノーマル時代の働き方として定着しつつあります。
企業にとっては生産性の向上が見込め、従業員にとっては時間や場所を問わず、より自由に働けるというのが、その主眼です。
しかし一方で、急激な変化がICT技術を使いこなせる企業とそうでない企業の格差を助長するのではないかという声があるのも事実。本記事では、テレワークをはじめ、アフターコロナを見据えた働き方改革について考察します。
出典:引用ページURL:国民の皆さまへ 関連情報(新型コロナウイルス感染症)|厚生労働省
(https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000121431_00094.html#yobou)
内閣官房新型コロナウイルス感染症対策推進室により、業種ごとの感染拡大予防ガイドライン1)が公開されています。
細部の具体的な項目は異なりますが、大枠は厚生労働省が提言する「新しい生活様式2)」を踏襲するものです。将来の働き方を示す指針として、まずは「新しい生活様式」の中で取り上げられている、「働き方の新しいスタイル」を見ていきます。
従業員の出社を交代制にして、ローテーションで業務を回していく勤務スタイルです。本来は常駐が必要な職場で順番に休みを取るために採用されるものですが、オフィスの人口密度を減らす感染対策として推奨されています。
実践方法は企業によりますが、出社しない従業員はテレワークで業務をこなすのが一般的です。また、電子化できない業務に携わっている事業部門は出社、それ以外はテレワーク、という形を採用する企業も少なくありません。
密閉、密接、密集という3つの密が発生しやすい公共交通機関の混雑を、従業員の出勤時間をずらすことで緩和しようという取り組みです。一見フレックスタイム制と似ていますが、時差出勤は出社時間が変わるだけで、労働時間を規定範囲内で任意に調整できるわけではない、という点が大きく異なります。
また、勤怠管理や割増賃金の処理が複雑になるなど、計画的に導入しないと人事部門に負荷が掛かるというデメリットもあります。
Web会議ツールやチャットツールを使って、ネットワーク上で行われる会議です。新しい生活様式では、人との接触を可能な限り避けるように推奨されています。そのため社内はもちろん、社外のコミュニケーションも、電子的に行うことが多くなっています。
オンライン名刺交換も普及しつつあり、今後はこうしたリモートワーク関連のツールの導入・教育も、人事部門の課題となってくるでしょう。
業種、業態によってはリモート化が難しく、どうしても出社が必要というケースも考えられます。そうした場合、換気やマスクの徹底が感染対策の鍵になります。
安全衛生を確保するためにも、職場環境に応じた換気設備やソーシャルディスタンスを取る仕組み、消毒用アルコールなどを整備することが大切です。
総務省では、図のようなテレワークの推進を呼びかけています。
引用ページURL:総務省|ICT利活用の促進|テレワークの推進
(https://www.soumu.go.jp/main_sosiki/joho_tsusin/telework/)
こうした新しい働き方の導入に伴い、人事部門の業務フローにも変化が求められています。早急に対応したい代表的な課題を、以下に取り上げます。
ローテーション勤務やテレワークという働き方が普及すると、従来の人事評価や賃金制度では対応しきれなくなります。時間や場所が自由になるぶん、労働時間の長さや時間帯といった基準では、どうしても不公平になってしまうからです。
あらかじめ求める成果を明確にし、それをどのタイミングまでに終わらせたか、というような、成果主義的な評価制度の確立が求められます。
テレワークのデメリットに、プライベートと仕事の切り分けが難しい、というものがあります。
従業員の労働時間を把握するのは、労働安全衛生法で定められた企業の義務です。しかしテレワークでは本人が意識しないうちに長時間労働をしてしまうリスクもあり、両立の難しさが大きな課題となっています。
この課題を解決する指針として、厚生労働省は「テレワークにおける労務管理のためのガイドライン3)」を定めました。テレワークを導入する企業は、上記ガイドラインに基づいた労働時間管理の見直し、調整を行う必要があります。
感染者を出さないことが大前提ですが、企業としては万が一のことも考えて、対外的に開示できる労働安全衛生対策を実施しなければなりません。
実施できる具体的な施策は業務の実態によりますが、公的な指針として厚生労働省が「職場における新型コロナウイルス感染症の拡大を防止するためのチェックリスト4)」を公開しています。こちらを参考に、職場の労働衛生対策を再考されてみると良いでしょう。
新型コロナウイルスの感染拡大に収束が見込めない以上、平時以上にコストの削減、業務の効率化を強く意識する必要があります。これは、業種・業態を問わず喫緊の課題と言えます。
政府も危機的状況を踏まえて各種助成金、奨励金制度を拡充していますから、ある意味では経営戦略を見直す大きなチャンスと捉えることもできるでしょう。
人事部門は、これまで以上に適材適所での人材活用、無駄の削減が求められる時代になります。BPOを活用してコストの削減と生産性の向上をスピーディに実現する企業も、既に出てきています。
業務のスリム化を図るため、普遍的な業務をアウトソースすることは、これからの人事部門に必須のノウハウとなるはずです。
1) 業種ごとの感染拡大予防ガイドライン
https://corona.go.jp/prevention/pdf/guideline.pdf?20200909
2)新型コロナウイルスを想定した「新しい生活様式」の実践例を公表しました|厚生労働省
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000121431_newlifestyle.html
3)テレワークにおける 適切な労務管理のためのガイドライン
https://www.mhlw.go.jp/content/000553510.pdf
4)職場における新型コロナウイルス感染症の拡大を防止するためのチェックリスト
https://www.mhlw.go.jp/content/11302000/000630736.pdf
ライタープロフィール
筆名:多田 真弥朗
様々な企業のマーケティングコンサルティグに関わる中で数多くの人材リクルーティング・人事部門の案件に従事。そこで培った人事部門系の豊富な知識をベースに独立し、コンテンツ ライターとして人事部門系、IT系、不動産投資といったテーマを中心に執筆活動を開始、現在に至る。