「書類は一式そろって初めて1件」なのに、システムでは別々に扱われていませんか

入社手続きを思い浮かべてみてください。新しく入社するスタッフからは、誓約書・身分証のコピー・住民票など、複数の種類の書類を受け取ります。担当者は、これらを「1人の社員の入社手続き」というひとつの塊として受け取り、内容を確認し、システムに登録します。契約手続きにおける契約書・印鑑証明書・登記事項証明書のセットや、申請受付における申請書とその添付書類のセットも同じ構造です。この記事のテーマは、比較検討全体を整理した「AI-OCR完全ガイド|選び方・比較・料金から導入までまるごと解説」の中でも選定ポイントの一つとして触れている「業務単位管理」です。

一方で、多くのシステムは帳票の「種類」ごとに処理する仕組みになっています。誓約書は誓約書、住民票は住民票としてそれぞれ取り込まれ、「この誓約書とこの住民票は同じ人の書類だ」という関連付けを、後から人が手作業でやり直すことになりがちです。

これまでの手続きの流れでは、書類は最初からセットで扱われていたはずなのに、システム側の処理方法とズレてしまう。この記事では、こうしたズレを解消する「業務単位管理」という考え方を紹介します。

なぜこのズレが起きるのか

現場の実務は、「1件の手続きに必要な書類一式」を単位に動いています。書類がすべてそろって初めて、1件の手続きとして完結する、という考え方です。

ところが、帳票の種類ごとに読み取り設定を行うタイプのAI-OCRでは、システムの処理単位は「帳票の種類」になります。誓約書の読み取り設定、身分証の読み取り設定、住民票の読み取り設定は、それぞれ独立した設定として扱われ、システム上は「別々のもの」として処理が進みます。

この結果、実務上は1件の手続きとして扱いたいのに、システム上では複数の帳票がバラバラに処理され、「この書類とこの書類は同じ手続きのものだ」という結びつけを、担当者があとから人手で行う必要が出てきます。これが、現場の負担として表れやすいポイントです。

業務単位管理とはどういう仕組みか

業務単位管理とは、1つの手続きで扱う「種類の異なる帳票のセット」を、そのまま1つの塊として登録・処理する仕組みを指します。

たとえば入社手続きであれば、「誓約書」「身分証」「住民票」という3種類の帳票を、「入社手続き」という1つの業務としてまとめて登録します。それぞれの帳票の読み取り項目は個別に設定しますが、実際の処理では、この3種類の帳票が最初から「1人の社員の入社手続き」というひとまとまりとして扱われます。

つまり、実務が最初から「書類一式で1件」として動いているのと同じ考え方を、システム側でもそのまま踏襲できる、というのが業務単位管理の基本的な仕組みです。

なお、業務単位管理は「同じ種類の帳票のフォーマット違い(たとえば取引先ごとに書式が異なる注文書)をまとめて読み取る」こととは別の話です。フォーマットが異なる帳票をどう読み取るかは、定型帳票・非定型帳票の読み取り精度の問題であり、業務単位管理が扱うのは、あくまで「種類の異なる帳票をひとつの手続きとしてまとめて処理できるか」という点です。

業務単位で管理することで生まれるメリット

書類の結びつけ作業が要らなくなる

帳票の種類ごとに個別に取り込む方式では、あとから「どの書類とどの書類が同じ手続きのものか」を人が関連付け直す必要があります。業務単位で登録しておけば、この結びつけ作業自体が発生しません。

複数の帳票を突き合わせて確認できる

帳票をひとつの塊として扱えるため、項目によっては帳票同士を突き合わせて比較しながら確認する、という使い方ができます。たとえば、申請書に書かれた氏名・住所と、添付された証明書の記載内容が一致しているかを並べて確認する、といった運用です。帳票ごとに個別に取り込む方式では、このような突き合わせ確認はできません。

手続きの完了状況を把握しやすくなる

1つの手続きに必要な帳票がすべてそろっているかを、業務単位でまとめて把握できるため、書類の受け取り漏れにも気づきやすくなります。

運用面で気をつけたいこと

業務単位管理を活用する際、運用で苦労しやすいのが「どの帳票にどの読み取り定義を割り当てるか」という設定作業です。標準では、この割り当ては手動で行う仕組みになっています。届いた帳票が業務内のどの種類にあたるかを都度指定したうえで、読み取りを行う運用です。

なお、当社のAI-OCRサービスにはオプション機能があり、利用いただくとこの割り当てを自動で適用できるようになります。運用の手間を減らしたい場合は、オプションの利用も選択肢のひとつとして検討するとよいでしょう。

どんな業務に向いているか

次のような特徴がある業務は、業務単位管理の恩恵を受けやすいと考えられます。

  • 1つの手続きで、種類の異なる複数の帳票をセットで受け取る(入社手続き、契約手続き、各種申請受付など)
  • 帳票同士の記載内容を突き合わせて確認する必要がある
  • 現在、帳票の種類ごとに個別にシステムへ取り込んでおり、あとから人手で関連付けている

CACの「AI-OCRサービス」では、種類の異なる複数の帳票を1つの業務としてまとめて登録し、それぞれの読み取り項目や確認・承認ルールを設定したうえで、業務単位でひとまとまりとして処理できる仕組みを備えています。

まとめ

「書類は一式そろって初めて1件」という実務の流れと、「帳票の種類ごとに処理する」システムの仕組みがズレていると、担当者が後から書類を結びつけ直す手間が発生します。業務単位管理は、このズレを解消し、これまでの手続きの考え方をそのままシステム化するための仕組みです。1つの手続きで複数種類の帳票を扱っている業務がある場合は、この観点でのサービス選びを検討してみてください。