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(連載:ESGと人事部 6/10) 人事部門の活動(省資源)

 企業のESG活動は、今や取り組んでいて当たり前となりつつあり、取り組んでいない場合のネガティブ評価が企業評価に影響する可能性さえあります。特に2020年の新型コロナウイルスの蔓延や、近年の気候変動による災害多発を受けて、企業には働き方改革等の構造変革に対しての期待が強まっています。

 企業の存続のために取り組まなければならないESG活動であれば、構造変革と併せて効率的に社内へ展開するとともに、活動成果を積極的に社内外へ発信して企業評価向上に繋げたいものです。人事部門として取り組む上で参考となるアイディアをご紹介します。本記事では資源の有効利用についての取り組みに着目します。

1.部門運営の省資源等(短期施策)

 前記事「人事部門の活動(省エネ)」では、法規制等を受けて実施することが当たり前になっている企業の省エネ、CO2削減活動について、せっかく実施するのであれば積極的に情報発信して、ブランド価値向上に繋げてはどうか、と提案しました。省資源も同様の枠組みでの推進が可能です。

 企業への省資源に関する要求は、図1に示すように、工場等で発生する廃棄物の適正処理からオフィス等で発生する紙やペットボトルなどの分別、リサイクルを求める資源有効利用促進法や各物品別のリサイクル法が適用されています。さらにリデュース、リユース、リサイクル(3R)から、廃棄物ゼロを促す循環型社会形成推進基本法も適用され、これら一連の法体系で企業に対し資源有効利用の高度化を促しています。

図1.企業への省資源の要求と影響



 企業のESG対応がニュースでも頻繁に取り上げられ、企業のブランドイメージへの影響が大きくなってきました。さらにグリーンモビリティーをけん引する米国テスラ社の時価総額が、生産量世界第三位のトヨタを抜くなど、株価にも企業のESG対応が影響する世の中になってきています。

 このような状況を踏まえると、省資源についても罰則規定がある廃棄物処理の遵法だけでなく、ゼロエミッションに向けて企業活動を加速させる必要があると理解できます。経産省は、省資源も企業経営の一環として捉えるよう、「廃棄物・リサイクルガバナンス」と表現して計画的な推進を要求するに至っています。

 省資源に関しても、世間の目が厳しくなっている中で、ブランド価値を棄損するようなニュースネタになるトラブルは、概して一部の社員における意識の低さから生じがちです。このリスクの芽を事前に摘むのが、人事部門とESG推進部門等との協力で実施される全社に向けての教育と意識づけです。

 3Rの枠では語られていませんが、すぐに取り組めて企業に好影響を及ぼす環境対策に「節水」があります。渇水により事業継続に影響がでるような事態はあまり起きませんが、節水も省エネと同様に経費削減効果とともに、企業の環境貢献効果を期待することができます。

 水資源の有効利用と節水を通じた省エネ・CO2削減貢献です。節水をCO2削減として表現することに疑問を持たれるかもしれませんが、事業、生活で使用する水は、上水道システムで供給され使い終わった排水は下水道システムで浄化処理されて自然環境に戻されます。

 そのため、節水することにより一連のエネルギー消費を削減することができます。節水での省エネ・CO2削減効果は大きく、効果算定法も確立しています(J-クレジット制度)。節水も省エネと同様に、節水効率の高い便器、水栓等への交換と、教育で効果を確保できます。人事部門での環境教育に織り込むことも一案です。

2.業務効率化(ペーパーレス化)のゼロエミッション視点評価(中長期施策)

 今回のコロナ禍への企業の対応として、働き方改革等の構造改革への期待が高まっていること、その一環で導入が試行されているリモートワークは、従業員の福利厚生だけでなく、省エネ・CO2削減の視点でも評価でき、環境貢献の事例としてアピールできることは、前記事「人事部門の活動(省エネ)」でご紹介しました。リモートワーク導入は、省資源の視点でも評価できます。

 リモートワークでは、各種帳票、文書、報告書等は、電子化されて共有されます。そのため自動的に紙の削減、ペーパーレス化に繋がります。企業内における紙の使用量は、購買量として把握できますので、リモートワークの導入計画において、導入職種ごとに紙の使用量と削減効果量を仮設定していくと、ペーパーレス推進計画が策定できます。ペーパーレス推進計画の進捗は、毎年の紙の購買量として定量的に進捗管理が可能となります。  多大な労力と費用をかけて推進するリモートワークであればこそ、社会・環境効果は最大限にアピールしたいものです。

 提案したリモートワークの省資源効果ですが、紙の購買量といった数値化されているデータを用い、第三者が追認可能な算定方法で表現できるため、外部へアピールできる効果となります。この定量性を確保せずに施策の効果を漠然と表現してしまうと不当表示として罰則の対象となり、ブランド価値を大きく棄損しますので避けなければなりません。

 先にご紹介した節水のCO2削減効果ですが、いまでは国や地方自治体、一部の企業で効果を定量的に算定して社会にアピールするまでになっています。この算定手法は当初、節水機器を開発し販売する会社が販促戦略として活用するために開発したもので(参照:「水の環境戦略(TOTO出版)」)、考え方の案を学術論文にまとめ、有識者検証を受けることで追認性が確保されました。

 さらにJ-クレジット制度等の国の評価制度に登録することで、定量的な評価を確実にしています。評価手法の確立には労力がかかりますが、企業が提供する商品やサービスが社会・環境課題解決に貢献できると言えるのであれば、企業のアピールに期待ができます。もし、自社の商品やサービスが普及することで社会・環境の課題解決に繋がっているのであれば、その効果の定量化は中長期的テーマとして取り組む価値があるかも知れません。

 

 

ライタープロフィール


筆名:柳紘理(やなぎひろみち)
工学博士
企業で長年研究開発から事業立上げまでを一貫して担当するとともに、国立大学・研究所の客員教授として、 環境経営や事業化に関連した規制基準を策定運営する学協会の運営に係る。

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