あなたの会社にマッチした人材育成とは?7つの方法を徹底整理!

作成者: 多田 真弥朗|Jan 14, 2021 7:32:00 AM

 人材育成には、いくつかの体系化されたノウハウがあります。闇雲に実施するより、すでにある知見を活用した方が、より効果的に人を育てることができるでしょう。本記事では、代表的な人材育成ノウハウを7つピックアップし、それぞれの概要を解説します。

OJT(職場内研修)

 OJTは、On the Job Trainingの略称で、職場で実務をさせることで行う従業員の職業教育、研修のことであり、企業内教育手法の一種です。第一次世界大戦時のアメリカで、造船所の補充人員を育てるために開発された職業指導法が基になっており、以下の4つのサイクルを回して学習内容を定着させていくのがセオリーです。

 

 

 生産技術の分野で用いられるPDCAサイクルの人材育成版、と考えるとわかりやすいでしょう。指導員の上司や先輩が身近にいて、また研修内容が業務に直結しているため、対象の人材が実用的な能力を身につけることができる、というのが大きな利点です。使うのは社内のリソースだけですから、数ある中でも比較的取り入れやすい人材育成方法と言えます。

 

Off-JT(職場外研修)

 実務でノウハウを教えるOJTに対して、現場から離れた場所で普遍的な知識を習得させるのがOff-JT(Off the Job Training)です。
外部の研修会社に頼るか、社内から講師を選抜するか、やり方はケースバイケースですが、いずれにせよ人事部門が中心となって、場所の確保やプログラムの作成など、各種手配をすることになります。

人材育成の方針によっては、新入社員ではなく、管理職を対象にOff-JTを行うこともあります。この場合は、専門の研修会社に依頼して、ニーズに応じた内容のコースを受講するのが一般的です。

余談ですが、厚生労働省が毎年発表している能力開発基本調査(令和元年)によると、Off-JTの実施状況は新入社員が64.2%、中堅社員が63.8%、管理職が51.3%となっており、階層に関わらず広く採用されている人材育成方法と言えそうです。

 

SD(自己啓発)

 SDはセルフ・ディベロップメントの略で、日本語では自己啓発や自己研鑽と言ったニュアンスになります。
外部からこうしなさい、ああしなさいと指導するのではなく、従業員が自律的に能力開発に臨める体制を整えるのが主眼の人材育成ノウハウです。
具体的には、書籍を与えたり、セミナーや通信講座の受講を促すことです。また、良いところをきちんと言葉にして伝える、能力を認めるなど、モチベーションを高める後押しをすることも効果的です。

いずれも、本人の意思を尊重するバランス感覚が求められ、また管理が難しいというのが難点。
しかし、自走できる従業員が増えれば、生産性の劇的な向上が見込めると考えられます。従業員が前向きに仕事に取り組む雰囲気も自然に醸成されますから、取り組んで損はないでしょう。

 

eラーニング

 

 

 eラーニングは、ウェブを活用した学習全般を指す幅の広い言葉です。一般的には、電子化された教材とネット端末、そしてLMS(Learning Management System)と呼ばれる、専用の学習管理システムを使って学習を行うことが多いです。
対面式の講義と違い、電子化された動画や専用の学習プログラムを使いますから、時間や場所に縛られずに実施できるのが大きな魅力です。

環境を整えるためにイニシャルコストが掛かる点がデメリットですが、長い目で見れば、人材育成に掛かるコストを大幅に削減することも可能。各自の成績や進捗をデジタルで見える化できますし、人員配置を検討する上でも、役に立つ情報が得られることでしょう。

 

ジョブローテーション

 社員の能力開発や、適材適所を見極めることを目的に、定期的に配置転換を行う人材育成方法。いわば、部門ごとにOJTを連続して行うようなものです。

その企業の職務の流れを網羅的に把握でき、また各部門スタッフとの交流を通して、会社への帰属意識を高める効果も見込めます。

対象となる職務、職場はケースバイケースで異なりますが、新入社員の場合は、1〜2ヵ月程度の短期であることが多く、幹部候補社員の場合は、数ヵ月〜半年程度を掛けてじっくり企業理解を促すことが多いです。

 

メンター制度

 

 

 メンター制度は、何でも相談できる気さくな師弟関係や先輩・後輩関係を、人工的に築くための制度です。
助言者側をメンター、被助言者側をメンティと呼び、マンツーマンかそれに近い少人数で身近に接することで、実務とメンタルを両面からサポートしていきます。

ただ、メンター側に人材の育成目的がないと、義務的なやりとりに終始して信頼関係が築けない、ただ気安いだけで人が育たない、といった事態を招くリスクも存在します。

そのため実施には、事前に関係性を築くためのイベントや、メンターを集めての研修などを行い、頭ごなしにマッチングをしない工夫をすることが大切です。シンプルなようで効果的な運用が難しい方法ですが、うまくいけば従業員の相互成長に加え、定着率の向上も見込める、取り組みがいのある制度と言えるでしょう。

 

OKR

 GoogleをはじめとするIT系グローバル企業を中心に、多く採用されている人材育成、成果マネジメントの手法です。

OKRはObjective and Key Resultsの略で、各自が個人的な目標とその達成度合いを図るいくつかの成果指標を設定し、それに向かって鋭意職務を遂行する、というような取り組みを指します。

重要な点は、目標の達成度で従業員を縛らないこと。従業員の志向や職務への姿勢、将来どうなっていきたいかと言った内面を目標に反映してもらい、それを以って自己研鑽や従業員同士の活発なコミュニケーションを促すことが大切です。また、個人の目標は最大限自由に設定してもらいますが、それは組織の枠組みに即したものである必要があります。したがってOKRの導入に当たっては、まず会社組織のOKRを設定し、それを広く従業員に共有する必要があります。

 

ノウハウを活かすには人的リソースの選択と集中が重要

 人材育成のノウハウは数多く存在し、しかも正解というものがありません。いずれの方法も、概要を掴んだ上で、自社に最適な育成方法を自分たちで確立していく必要があります。

 情報革命にコロナ禍と、ビジネス環境が激変する渦中にある今、人事部門はこれまでにない創造的な業務を担うことになります。
分かりやすいところで言えば、リモートワークへの対応や、それに伴う社内制度の改革、ICT技術の選別、採用などです。

BPOサービスが発達し、ルーチンワークを外に出せる環境が整っています。そうした外部リソースを効果的に活用し、優秀な人材が自由に動ける環境を作ることが大切です。



参考文献

1)令和元年度「能力開発基本調査」の結果を公表します
https://www.mhlw.go.jp/stf/houdou/00002075_000010_00004.html

2)女性社員の活躍を推進するためのメンター制度導入・ロールモデル普及マニュアル
https://www.mhlw.go.jp/file/06-Seisakujouhou-11900000-Koyoukintoujidoukateikyoku/0000106269.pdf

3)Google re:Work - ガイド: OKRを設定する
https://rework.withgoogle.com/jp/guides/set-goals-with-okrs/steps/introduction/