医療用医薬品市場に進出した製薬企業がMR-Naviを導入。
MRの活動内容分析や進捗状況把握を迅速に実現し、
同時に実消化データ管理業務のBPOにより業務時間を大幅に削減
株式会社富士薬品(以下、富士薬品)は、医療用医薬品の市場浸透をきっかけにMR向け営業支援システムの導入を決断。CACの製薬企業向け営業支援システム「MR-Navi」を導入すると同時に、メンテナンス負荷が増大していた実消化データ管理業務をアウトソーシング(「実消化BPO」)することで業務負担を軽減し、MR(医薬情報担当者)が正確かつ迅速に販売実績データを把握できるよう整備した。
課題
- 医療用医薬品の効率的な販売に資する新しい営業支援システムが必要
- 大幅増員するMR の入社までの短期間(3ヶ月)での導入が必須
- 実消化データ管理の作業負荷の大幅な軽減が不可欠
導入効果
- 医療機関や医薬品卸へのMRの活動内容分析や進捗状況把握が迅速に可能になり業務が大幅に効率化
- ブラックボックス化した旧システムの仕様を明確化し約3ヶ月で開発~運用開始を実現
- 実消化データ管理業務がほぼ半減し、戦略的な施策立案の時間捻出が可能に
痛風・高尿酸血症治療剤の発売・市場浸透が、
MR-Navi 導入の大きな転換点
・富士薬品についてご紹介ください。
当社は1930 年2月に富山市で配置薬販売事業を創業し、1954年4月に本社をさいたま市に移して法人化しました。その後販路を広げ、国内最多となる350 万軒のお客様に配置薬をお届けする全国販売網を構築するとともに、1986年2月には富山市に医薬品製造工場を建設して、製造から販売までの一貫体制を確立しました。
1992 年には「ドラッグセイムス」のブランド名でドラッグストア事業を開始し、現在までに1,200以上の店舗網を構築してドラッグストアビジネスを主力事業にまで成長させています。
一方で、1991年からスタートした医療用医薬品の研究開発では、痛風・高尿酸血症治療薬の新薬開発に成功し、2013年9月より製造販売を開始しました。また、それに続く自社創薬の医療用医薬品も複数、臨床試験の最終段階に入っています。
このように、当社には配置薬販売事業とドラッグストア事業という2つの販売チャンネルと、それを支える医薬品製造事業という製販一貫体制のビジネスモデルがあります。これを基盤に、医療用医薬品の研究開発・販売事業を加え、今後もお客様の健康というニーズに即応できる「複合型医薬品企業」をめざしています。
・今回、新たにMR-Naviを導入し、同時に実消化BPOのサービスを利用して、業務をCACにアウトソースされています。
以前は、顧客情報や売上情報、日報などの報告情報などがバラバラの状態で運用されており、統一した営業支援システムが存在しませんでした。MR-Naviを導入してからは、MRはMR-Naviを活用して訪問計画を立案し、実消化BPOでクレンジングされたデータを元に販売実績と進捗などを確認して、他のMRと情報を共有しながら日々の営業活動に役立てています。ようやく適正な営業支援システムが社内に根付き始めたという感じです。
また、情報システム部でもMRの活動報告を日々確認することで、コミュニケーションや活動管理に役立てています。特に、当社の社長からのMRに対するコメントが多くなっており、経営層にとっても重要な営業情報基盤になっているという証拠だと思います。
・MR-Naviを導入した背景について教えてください。
やはり、痛風・高尿酸血症治療剤の発売・市場浸透が大きな転換点になったと思います。旧システムは、配置薬販売やドラッグストア向けに設計されたBtoC 要素の強いシステムだったので、医薬品卸や医療機関などがお客様となるBtoBの医療用医薬品の販売管理には適していませんでした。それでも、機能追加を重ねるようなパッチワーク的なシステム構築を続けた結果、システム同士の連携やリンクがない状態になり、「用語」の定義も曖昧になるなど、一貫した思想に基づくシステム設計にはほど遠いものになってしまいました。
また、旧システムはサーバーに大きな負荷をかけていたため、売上実績に関連したデータをダウンロードするだけでも長い時間がかかっていました。その度に業務が中断し、非常に精神的ストレスがかかるだけではなく、マシンのパワー不足から一時的にサーバーに負荷がかかると数字が化けてしまい、正確なデータが出力されないこともありました。
そうした不具合も、MR-Navi 導入で大幅に改善されました。一気通貫したシステム設計によって、ポリシーやコンセプトが明確化して定義も統一され、処理の厳格性やデータの信頼性もアップしました。また、ダウンロードがスピーディになり、常に正確なデータが出力されてくるので、ストレスもほとんど感じなくなりました。
・では、実消化BPOを活用したきっかけは何だったのでしょうか。
最大の理由は、データメンテナンス負荷の増大でした。システムがつぎはぎだらけだったのでデータのメンテナンスが大変で、その作業に割く時間と労力が膨大になり、本来ならば企画や戦略を立案する時間を、データの欠落を修正するために使っていた状況でした。
実消化データ管理についてもいくつか問題がありました。実消化データ用のWebシステムはあったのですが、機能不足のため画面上で集計することはできず、実消化の実績を見ようとした場合、一旦全てExcelにインポートする必要があり、かなりの回数クリックし続けなければ情報にたどり着くことはできませんでした。長年使っているためシステムがブラックボックス化して、ユーザーの期待に応える改修ができなかったのが原因でした。
また、従来は単月でしか管理できなかったため、月ごとに帳票を作成していたのですが、単月管理では月をまたいだ分析が難しく、管理も非効率的でした。その帳票も本部スタッフが毎日のように作成して現場にいるMRに送付していたので、帳票作成のためだけに多くの時間が費やされてしまうという状況だったのです。
まさに今、実消化BPOでアウトソースしている業務そのものが大きな負担になっていたわけです。
大幅増員するMRの入社までに対応するため、
MR-Naviと実消化BPOをわずか3ヶ月で稼働
・旧システムに代わる営業支援システムとしてMR-Naviを選択した理由について教えてください。
主に3つありました。1つ目は価格面での対応。製薬企業は多大なコストを投資してMR向けのSFAを開発していますが、MR-Naviはパッケージをそのまま利用できるので、低コストでの導入が可能でした。
2つ目は製薬業界における長年の豊富な経験値と信頼度。CACは業界の業務知識が豊富で、医薬品の営業活動に必要なツールを一通り揃えているほか、システム導入におけるスキルが高く、製薬業界特有の用語にも習熟し、コミュニケーションに齟齬がなかったという要素もありました。
そして3つ目はCRMとSFA 機能を合わせ持つ営業支援システムとしてのMR-Naviの実績と評価です。複数の大手製薬企業もMR-Naviを導入しているなど確かな実績があり、安心感と信頼性は競合の中でも群を抜いているものがありました。
また、営業支援システムと実消化BPOをオールインワンで提供可能だったことも採用の決め手となりました。
・導入~本稼働開始までのスケジュールをご説明ください。
最初は、2016年2月に実消化データのマスタ管理を改善したいというテーマでご相談しました。打合せを進める中で、SFAやCRMにも課題があることも明確になり、営業支援システムとしてMR-Naviの活用についても検討しました。その後4月に両社で営業支援システムのグランドデザインを実施し、それを基本として5月にMR-Naviの導入を正式に決定しました。
通常は半年~ 1 年をかけて導入するものですが、当社は2016 年10月に医療用医薬品部門のMRを大幅に増員するため、入社のタイミングまでにMR-Naviを整備しておきたいという事情がありました。そのため、スケジュール的には無理をお願いし、MR-Naviと実消化BPOの開発を2016 年7月~ 9月にかけてわずか3ヶ月で完了しました。こうした納期の短縮も他社では対応できなかったと思います。
そして、9月末にMR-Naviの第一段階の運用が開始。10月中旬には実消化BPOの運用も開始しました。
・その過程において、工夫された点やご苦労されたことなどのエピソードを教えてください。
MRは日々営業活動を行っているため、MR-Naviのトレーニングのための時間がとれませんでした。そのため、情報システム部や各部門長などとも相談し、メルマガの「MR-Naviニュース」を発行し、MR全員に配布することで、MR-Naviの概要や使うための基本操作、禁止事項など、マニュアルを活用しながらレクチャーしていきました。メルマガは不定期ですが今でも発行しています。社内のユーザーから、使い方のアイデアや新しい活用方法などがフィードバックされてくるのが非常に興味深いですね。管理者の知らない視点にも気づき、大いに役立っています。
また、CACの支援も大きく役立ちました。従来のシステムは詳しい仕様が不明確になっていたためブラックボックス化し、ほんの少し修正するだけでもプログラムを解析して四苦八苦しながら直している状態でした。MR-Naviの導入に当たっては、担当のプロジェクトマネジャーが既存プログラムの詳細を解析し、仕様を明確化するなど手厚いフォローをしてくれたので非常に助かりました。
MR-Naviと実消化BPOによる実績データの把握で、
医療用医薬品市場の競争に打ち勝つ武器を入手
・MR-Naviの導入効果についてご説明ください。
MR-Naviの導入によって、医療機関や医薬品卸へのMRの活動内容の分析が可能になったため、上長はMRの行動を的確に把握できるようになりました。Excelを使わずとも概略の状況が見える化し、これまでの相当回数のクリックからわずか2回で表示できるようになったことも大きなポイントです。業務が効率化するとともに、ユーザーのストレスも大幅に軽減されています。
また、MRや営業所長が複数月の帳票を時系列的に並べることが可能になり、進捗状況が一目で理解できるようになりました。同時に、生産的な分析も実現し、今まで本部側が行ってきた帳票出力業務も大幅に削減されています。それにより、本来の企画や提案などの業務に時間を割けるようになったメリットは大きいと感じています。
さらに、MR-Naviのレスポンスの高さもMRのパフォーマンスを強力に支援してくれています。当社はMRの売上集計を朝の8時半と夕方の4時の2回に分けて行っていますが、従来のバッチシステムでは、前日夕方4時以降に取り込んだデータが翌日8時半を過ぎないと販売実績に反映されないため、MRからは不満の声がありました。しかし、現在は午前7時にはカレント版の実績データを見ることができるようになったため、朝一番に当社のMRがお客様であるMS(医薬品卸販売担当者)と打合せすることが可能になっています。
・実消化BPO利用後の変化についてはいかがですか。
従来は、ベテランの担当者が膨大な時間をかけて実消化データを管理していたのが、実消化BPOを利用することによって作業時間をほぼ半減するまでに短縮できました。ベテラン社員が実消化データの管理だけに業務時間を費やす無駄が大幅に削減できたことは、効果として大きいと感じています。
稼働当初から比較すると、当社からの問合せは1/10にまで減少しています。また、所定の時間内は無償で保守サポートに対応してくれるので、運用面も安心です。本部業務として、戦略的な施策立案にかける時間が確保できるようになったことは大きいと思います。CACはマスタのクレンジングも実施してくれるため、今まで欠落だらけだったマスタがきれいになることで、実績も整然と表示されるという好循環が働きます。
今まで実消化データを、さまざまな角度から詳細に照会できる画面がなかったのですが、MR-Naviと実消化BPOによって正確かつ迅速に実績データの把握が可能になり、当社のMRもようやく医療用医薬品市場の激しい競争に打ち勝つことができる武器を入手できたと意気込んでいるように感じます。
また、今回MR-Naviと実消化BPOを導入することによって、さまざまな部分で定義が確立するなどの副次的な効果もありました。例えば、面談軒数に関してもディテーリング(MR による医療担当者に対する面接・情報伝達活動)とコール(得意先への訪問回数)との違いも曖昧な扱いでしたが、今回のシステム更新で言葉の定義を整理することができ、ディテーリングとコールを分けて管理するようになったので、次へのアクションが明確になりました。
大手製薬企業のノウハウをパッケージで導入。
中堅クラスの製薬企業にとっては大きな朗報
・今後の活用予定、展開計画などがございましたらお教えください。
2016 年10月導入時は早期立ち上げを優先させたため、標準機能でのスタートとなりましたが、2017年2月までに一部の帳票機能をカスタマイズし、実消化データを利用した医薬品卸に対するアローアンス(報奨金)処理や、面談管理、計画登録などの機能を追加しています。今後も当初の計画に従って機能追加を行っていくことで、MRや流通担当者がさらに使いやすい環境を整備していきたいと考えています。
・もし、他企業に対しMR-Naviや実消化BPOをご推奨いただけるとしたら、どのようなアドバイスをいただけるでしょうか。
CACがさまざまな医療機関や大手製薬企業などから得たノウハウを、定期的に標準機能として搭載し、日本の商習慣に合わせて使いやすい機能に日々進化させているパッケージなので、それを導入するだけでメリットを享受できると評価しています。これは多くの製薬企業、特に中堅クラスの企業にとっては大きな朗報なのではないでしょうか。
・最後に、今回のプロジェクトを振り返り、ご評価、ご感想をいただけますでしょうか。
営業支援システムを導入するだけで、MRの営業活動全体がワンストップで支援可能になることが理想です。MR活動におけるSFAの4つの柱である「売上」、「顧客」、「活動」、「学術」のうち、今回のMR-Navi導入により、学術以外の全てで目的は達成したと考えています。
また、検討の経緯を振り返ると、プロジェクトマネジメントの面においても優れていると感じています。当社からの厳しい要求に対しても、可不可を明確に判断してプロジェクトを成功に導いてくれたほか、約束した期限をしっかりと守る開発体制も安心できる要因になりました。
現在も二次開発は進行中ですが、導入当時と同じ熱意と責任感を持って支援していただけているので大変感謝しております。引き続き、他のシステムとの連携を見据えたさまざまなアイデアを提案してもらえるよう期待しています。
株式会社富士薬品様、本日はお忙しい中、貴重なお話をありがとうございました。
株式会社富士薬品のURL http://www.fujiyakuhin.co.jp/
- 本記事の内容は2017年3月時点での情報です。